Diary of Takashi Otsuka Architect Office



育誠学館5 − ディテール
上棟から3週間余り、既に形になっている部分も出てきました。

何気なく見えている部分にも色々と設計上の意図が隠れています。
例えばこの写真。2つの屋根の重なる先端部の見上げです。



軒先に見える溝は屋根内の通気孔です。屋根内部には断熱性と湿気の排出のために通気層を取る必要がありますが、これを通常通りに軒先と棟側に既成品の通気孔金物を設けて取ることは簡単です。しかしこうして納まりの工夫によりスリットを確保することで、軒先をすっきり見せることができます。

壁と屋根の当たる部分には黒い線(金物)が見えています。壁はモルタルなので屋根際には左官の定規としてなんらかの材料が必要ですが、この金物により壁を少し手前で止め、屋根が浮いたように見せる効果を狙っています。

下の方に見える壁の端部のグレーの材も左官の定規用の金物です。この部分は鋭角なので、左官壁が欠けないよう、またきれいな直線を出すように金物を入れています。

些細なことですが、こういった一つ一つのディテールの積み重ねが建物の印象を大きく左右します。

オープンに向けて徐々に盛り上がる、熱意あふれるいくせい塾のブログも順調に更新中です。是非ご覧下さい。
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育誠学館4 −上棟
すっきり快晴の空の下、数日前に土台敷きが終わり、上棟の日を迎えました。施主様に四隅を清めていただき、いよいよ建方のスタートです。
土台敷き・柱建て
お清め

2棟に分かれている上に登り梁もある手間のかかる架構でしたが、今は工場で仕口加工を行うプレカットが主流です。熟練した職人の手と機械化の良いところ取りといった形で、すいすいと組み上がっていきます。
プレカット仕口


ある程度組んだところで下げ振りというおもりを使って垂直を確認しながら進めます。登り梁同士が45度に取合う部分などもあり、途中の段階でもしっかり水平・垂直が取れてないと梁がはまらないということも起こります。
建入れ直し

かなり組みあがってきました。この状態では斜めの梁がせめぎ合うこのアングルが気に入っています。
建方途中

屋根廻りが一部残っていますが、建方工事はこの日でほぼ完了しました。
建方完了

ここまで来ると皆が空間をイメージしやすくなるので、施主様も改めて色々とやりたいことが出てくるのが普通です。
設計通りに作っていくのはもちろんですが、その上で色々な改善案を盛り込みながら即興的に進めて行くのが現場の醍醐味でもあります。
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目神山の家2 −基礎工事
斜面地のために基礎工事が長期間続いています。

この日は2回目の配筋検査です。コンクリートを打つ前に、鉄筋や型枠が正しく施工されているかを確認します。
鉄筋継手部分
設計通り鉄筋が入っていることはもちろんですが、設計通りの強度や耐久性を持たせるためには鉄筋を継ぐ部分の重ね長さ(「定着長さ」)、型枠と鉄筋との空き寸法(「かぶり厚さ」)も大事なので重点的にチェックします。

かぶり厚さの確保
スペーサーという資材(写真中のグレーや白のもの)を鉄筋にかませることで、コンクリートを打つ際に鉄筋が押されてかぶり厚さが不足するのを防ぎます。

検査では大きな問題はなく、数ヶ所指示した上で次の工程に進めていただきました。
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育誠学館3 −基礎工事完了
型枠も外れ、基礎工事が完了しました!

補修の必要な所もなく、土台のずれを防ぐためのアンカーボルトもきちんと入っています。

いくせい塾のブログにも利用者目線で工事のようすが書かれていますので、是非ご覧下さい。

来月初めにはいよいよ上棟を迎えます。
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育誠学館2 −基礎工事
この日は基礎工事です。

地盤調査の結果を受けて、今回はコンクリートを一面に打つベタ基礎を採用しています。

基礎工事_打設前
コンクリート打設に先立って、設計通りに鉄筋が入っているか、かぶり厚さ(型枠と鉄筋のあき)は取れているかなどチェックを行います。

数ヶ所是正してもらった後、無事ベース部分の打設完了しました。
基礎工事_打設後
一番暑い時期なので、早くもコンクリートが固まり始めています。急激に固まることでひび割れなどの不具合が起こることを防ぐため、水を撒いて養生します。

この後少し間をおいて立ち上がり部分を打設し、基礎工事の完了となります。
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目神山の家1 −着工
西宮の山手の目神山というところで新しい現場が始まりました。石井修氏の一連の作品で有名なので建築に詳しい方ならご存知かもしれません。

外壁後退や最低敷地面積、最高高さ、緑化率、外壁の色などたくさんの基準が設けられ、設計には気を使いますが、その分とても良い環境が保たれている地域です。

そして敷地からはご覧の通りの眺望。この眺望を最大限活かした家づくりのスタートです。


目神山に限らず、阪神間の山手の敷地はかなりの確率でこのような花崗岩がごろごろと出てきます。石を避けながら建物を建てて行くのは大変ですが、使える物は外構の石積みなどに使っていきます。

付近には同じように花崗岩を積み上げた塀が至る所に見られます。こうしてそこにあるものを使っていくことで、目神山らしい風景が引継がれていきます。

石と格闘しながらの地盤改良工事もほぼ終わり、次は基礎工事に入っていきます。
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育誠学館1 −着工
加古川で30年近い実績を持つ学習塾「いくせい塾」の新教室の計画を昨年から進めてきました。

新教室はITを駆使した先進的な授業を想定し、「育誠学館」として秋にはオープンの予定です。

縄張りの確認

この日は縄張りといって建物の位置や高さを確認する工程です。
境界線からのあき寸法や周囲との高低差を再確認しながら決定していく大事な作業です。

この後地盤改良、基礎工事へと続きます。
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瀬戸内国際芸術祭2010
1週間ほど前になりますが、今月いっぱいまで開催されている瀬戸内国際芸術祭に行ってきました。

今回は日帰りだったため、高松から一番近い女木島のみですが、イベントの雰囲気の一端は十分に感じることができました。

高速バスで高松に来ると駅前のシンボルタワー前に着きます。この一帯は港に近いこともあり、芸術祭の拠点となっていて、ポスターやバナーで雰囲気を盛り上げています。


港へのブリッジを行くと早速作品が見えてきます。ここのブリッジは駅とシンボルタワーと港をつないでいて、元々気持ちよく歩けるところですが、今は作品のフレームのような効果もあって、背景の海を含めていい絵になります。


"Liminal Air- core- / 大巻 伸嗣"


当日は予報は悪かったのですがいい天気で、船の旅には最高です。やはり瀬戸内の海は和みます。


15分ほどで女木島に到着します。感覚的にはほとんどバスのようなものです。


"鬼合戦、あるいは裸の桃の勝利 / サンジャ・サソ"
女木島は通称鬼が島。桃太郎伝説の地です。山上には鬼の洞窟(鬼=海賊の根城だったとのこと)があり、その中にも作品があります。


山上からの眺め。鬼も良いところに住んだものです。


山上にはもう一つ作品があり("緑の音楽 / ロルフ・ユリアス"、サウンドスケープなので写真はありません)、結構なアップダウンです。洞窟前の茶屋で一服。


冬の季節風(「オトシ」と呼ぶ)の強い女木島では海岸沿いに「オオテ」と呼ばれる石垣が続き独特な景観を形作っています。これは少し山の方に上った集落の外れにあたるので「オオテ」ではありませんが、段々畑も丁寧な石積みで美しく作られています。コンクリートブロックまで積んでいるところを見ると少しずつ補修しながら使っているのでしょうか。


日本中の島々と同様に女木島も平地が少なく、ここに移る集落が島のほぼ全てです。対岸の高松市街のビル群とその近さが不思議な風景です。


"Comfort #6 / ラング/バウマン"
使われなくなった保育所がバルーンに占拠されています。


"不在の存在 / レアンドロ・エルリッヒ"
金沢21世紀美術館のプールでも有名なレアンドロ・エルリッヒ。ここでも楽しい仕掛けで考えさせてくれますが、残念ながら内部は撮影禁止なのでネタバレはやめておきます。廃屋を作品とレストランで再生しています。




"均衡 / 行武 治美"
こちらも廃屋(納屋)を利用した作品です。集落を歩いていると本当に廃屋が多いです。


海岸沿いの「オオテ」です。もともとは防風・防潮のための強固なバリアですが、今ではこの島独特の景観を形作る、なにかほっとする存在です。


海岸から一歩入ると各家の塀も石積みとなっています。黒い石積みに囲まれていますが、両サイドが平屋で、島の集落には珍しくどの家も広い庭を取っているため、空が広く不思議な開放感があります。


"20世紀的回想 / 禿鷹 墳上"
残念ながら音楽は聴けませんでした。


"カモメの駐車場 / 木村 崇人"

今回は平日にもかかわらず結構な人出で驚きました。イベント的には成功といえるのでしょうが島の方々がどう感じているのかも気になります。ともあれ、今月中に何とか別の島にも行きたいところです。マナーを忘れず、あわてず、のんびりと。
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省エネセミナー
断熱・省エネ関係のセミナー3days終了しました。
学生から遠く離れた身には長時間の聴講はこたえます(笑)

たまたま3日連続だったのですが全て別々のセミナーです。少しずつ異なる内容で違う立場の方々の主催だったので、かえって色々な視点から考えることができました。

基本的には高気密高断熱としながらも、それを免罪符としてよい空間づくりがおろそかにならないよう日々心がけていますが、目指すべき性能値や優先順位などよく検討して、それぞれの建主に合わせた解を提案していきたいと改めて感じました。

省エネ関係は思い込みや間違い、誇大広告などが世の中にあふれていますが、ぜひプロの意見を参考にして、誤った情報に惑わされることのないようにしていただきたいと思います。
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夙川公民館の話
自宅近くを流れる夙川沿い、阪急夙川駅から少し南に下ったところに夙川公民館があります。地元の方にはおなじみですが、かの松下幸之助寄贈による松下記念ホールがメインの施設です。

私も年に1〜2度は訪れていますが、昨日もその夙川公民館に行く機会がありました。ここは川沿いにあり夙川公園からアプローチする正面側だけでも十分普通の公民館より魅力的なのですが、なんといっても一番の売りは池の上に建っているという点です。前も後も、さらには下も水面に囲まれた、公民館としてはなかなか他にはない施設です。



ただもっとこの池を活かした建物になればいいのにと毎回思います。ホールの舞台が池側になっていることもあって、施設内から池をのぞめる場所が少ないのです。池に面した眺めの良い窓とかテラスとか、いくらでも気持ちよさそうなスペースが作れそうなのですが。いろいろ難しい点もあるでしょうが、いずれ来るであろうリニューアルの時にはぜひともそのあたり考慮していただきたいものです。
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洋書にしては安いです。

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